テレアポのスクリプトを、一度ぜんぶ捨てたことがあります。
完璧に読み上げるほど、相手の心が離れていくのが分かったからです。用意した言葉が、目の前の人に一つも刺さっていない。そんな感覚がしばらく続いていました。
先日、同じ月に会社を立ち上げた経営者の方に話を聞く機会がありました。建設や運送のような、電話がつながりにくい業界に営業をかけている方です。その方との会話で、あのモヤモヤの理由がやっと言語化できました。
「なんでわかるの」と言われる営業だけが刺さる
その方はこう言っていました。「課題を超解像度で言い当てると、"なんでわかるの"になる」。
思い当たることがありました。展示会で「こんにちは!よかったらどうぞ!」と声を張り上げていた頃、面白いほど素通りされたんです。当時は声の大きさの問題だと思っていました。
違いました。通路を歩く人は、挨拶に用がありません。自分の課題にしか、足を止めない。
これはテレアポでも展示会でも同じ構造です。相手が反応するのは「言葉のクオリティ」ではなく、「自分ごとの解像度」でした。
捨てたのはスクリプトではなく、順番だった
正確に言うと、スクリプトを捨てたわけではありません。順番が逆だったのだと思います。
先に言葉を用意するから、目の前の人が見えなくなる。先に相手を見れば、言葉は後からついてきます。
この順番の違いは、実務ではこう表れます。
- スクリプト先行:業界共通の課題を並べ、相手に当てはめようとする
- 相手先行:相手の会社・役職・直近の動きから仮説を立て、当てはまる言葉だけを話す
前者は「一般論を読み上げる人」に見えます。後者は「うちのことを知っている人」に見えます。この差が、電話越しでも、展示会の通路でも、そのまま反応の差になります。
つながりにくい業界ほど、「会いに行く」が効く
その経営者は、つながりにくい業界だからこそ「つながったら必ず会いに行く」と言っていました。一社ずつ、個別の資料を作って。
泥臭いです。でも、それが一番速い。
電話一本で決裁が動く業界は多くありません。とくに建設・運送・製造のような現場を持つ業界は、電話の先に「会う」という工程が入って初めて話が進みます。個別資料は、電話で刺さらなかった仮説を、対面で検証し直すためのものと考えると設計しやすくなります。
実務で再現するための 3 ステップ
感覚論で終わらせず、明日から使える型に落とすと、次の 3 ステップになります。
- ステップ 1:業界共通トークを一旦封印し、相手企業の固有情報(採用状況・直近の設備投資・求人媒体の傾向など)を 3 つ以上集める
- ステップ 2:その情報から「たぶんこの課題で困っている」という仮説を 1 つに絞る。複数出さない
- ステップ 3:仮説が外れた前提で、電話やその場では深追いせず「合っていたら会う」ラインまで持っていく
スクリプトは、仮説がなくなったときの保険として持っておけばいい。主役にしないことです。
解像度は、準備の量ではなく順番で決まる
営業トークの精度を上げようとすると、多くの場合「言葉を増やす」方向に進みがちです。ですが、今回の経験が示したのは逆でした。言葉を減らし、相手を見る時間を先に確保するほうが効く。
展示会の通路で足を止めてもらえるのも、電話の向こうで話を聞いてもらえるのも、結局は同じ理由によります。
相手が「これは自分の話だ」と気づいた瞬間だけ、営業は始まる。
言葉が先か、相手が先か
スクリプトを磨いても、順番が「言葉 → 相手」のままなら一般論から抜け出せません。「相手 → 仮説 → 言葉」に並べ替えるだけで、同じトーク量でも刺さり方が変わります。まずは 1 社ぶんの固有情報を 3 つ集めるところから。
仮説の材料になる「誰にかけるか」の決め方は、テレアポリスト設計の 8 つの型 に書きました。展示会の通路で素通りされていた頃の話は 展示会の声掛け、やめた 5 つのこと にまとめています。
この考え方を前提にした支援の進め方は、営業代行 にまとめています。
