「来期も同じ展示会で、同じブースサイズで、去年と同じ内容で申し込んでおきました」。これを聞いた瞬間、私はいつも手を止めます。悪い報告ではないんです。でも、これは思考停止の合図でもあります。
私は展示会支援の現場で、毎年同じ会場に立つ企業をたくさん見てきました。担当者に「今年はどうでした」と聞くと、だいたい「まあ、例年通りです」という答えが返ってきます。この「例年通り」が一番危ないんです。
名刺の枚数で判断しているうちは見直せない
展示会を見直すべきかどうか、多くの会社は「名刺が何枚集まったか」で判断しています。これだと、去年より少し増えていれば「成功」、少し減っていれば「まあ仕方ない」で終わってしまう。判断の軸がふわっとしているんです。
TSUNAIDEでは、展示会の成果を名刺の枚数ではなく「次回商談の日程を確定できた件数」で見ています。設計込みで支援した案件では、1回の展示会で平均20件の商談化につながっています(当社支援案件・2026年時点の実績値です)。この数字を軸にすると、見直すべきかどうかがはっきり見えてきます。
名刺300枚もらって商談確定が3件の展示会と、名刺80枚で商談確定が20件の展示会。前者を「盛況でした」と社内報告している会社、正直たくさんあります。
やめる基準、続ける基準
私が現場で使っている判断の分かれ目は、シンプルです。
直近2回の出展で「商談確定件数」が横ばいか減っているなら、一度立ち止まる。逆に、担当者が変わった、ブースの内容を変えた、リード獲得後のフォロー体制を変えた、という「変数」が一つでも新しく入っていて、それでも数字が伸びていないなら、これは会場や業界の問題ではなく、自社の設計の問題です。
反対に、商談確定件数が去年より増えている、もしくは新規の業種・部署の名刺が増えているなら、続ける価値があります。ここで「なんとなく去年より疲れた」とか「担当者の熱量が下がった」という感覚だけでやめる判断をすると、あとで一番効いていた展示会を切ってしまうことがあります。感覚と数字、両方見るんです。
社内で「やめよう」と言えない問題
ここが一番泥臭いところなんですが、展示会をやめる決断で一番難しいのは、会場選びでも予算でもなく、社内での言い出しにくさです。何年も続けてきた展示会を「今年はやめましょう」と言うのは、担当者にとって勇気がいることです。前任者が始めた企画なら、なおさらです。
私が担当者に伝えているのは、感情論ではなく数字を先に置いた言い方です。実際に、私はクライアントの社内会議に同席したとき、こう言ったことがあります。
「今年の出展、名刺は増えましたが、商談の日程が確定したのは去年の半分です。この数字だけ見て、来年どうするか決めませんか」
感情や雰囲気ではなく、決まった件数という事実を先に出す。これだけで、社内の議論がずいぶんラクになります。「なんとなくやめよう」ではなく「この数字がこうだったからやめよう」という会話に変わるんです。
見直すなら、会場を変える前にやることがある
展示会を「やめる」か「続ける」かの二択で考えがちですが、実はもう一つ選択肢があります。それは「同じ会場のまま、設計だけ変える」です。
ブースの内容、声かけのトーク、フォローのタイミング。ここを変えずに会場だけ変えても、同じ結果になることが多いです。私はよく「会場を疑う前に、自分たちの当日の動きを疑ってください」と言っています。名刺交換した相手に、何日後に、どんな内容で連絡しているか。ここが雑だと、どの会場に出ても商談確定件数は伸びません。
正直、地味な話です。ブースのデザインを刷新するより、会期中のトークスクリプトを見直すほうが、圧倒的に地味です。でも、効いてくるのはこっちなんです。
実務チェックリスト
- 直近2回の出展の「商談確定件数」を数字で並べて比較する
- 担当者・ブース内容・フォロー体制のうち何を変えたか書き出す
- 会期中のトークスクリプトを見直す前に会場変更を決めない
- 社内会議に出す資料は名刺枚数ではなく商談確定件数を先頭に置く
- やめる/続けるを決める会議の日を来期予算申請の1ヶ月前に設定する
- 名刺交換後のフォロー連絡までの日数を過去2回分洗い出す
- 新しい業種・部署からの名刺が増えているかを別枠で集計する
