「今日も特になしです」。ある営業担当の日報を見て、私は正直がっかりしました。展示会明けで50件近くのリードを抱えているはずなのに、日報には一行だけ。これでは商談化の進捗も、詰まっている理由もわかりません。
この状態を変えたくて、日報をAIに要約させる仕組みを入れました。狙いは「上司が楽をするため」でした。でも実際に変わったのは、AIの出力の質より先に、書く側の書き方だったんです。
「特になし」が通用しなくなった理由
AIに要約させるには、材料が要ります。当たり前ですが、書かれていないことは要約できません。最初にAIに日報を通したとき、出力はこうでした。
「本日の活動内容が確認できませんでした。訪問先・商談状況を記載してください」
これを見た営業担当は気まずそうにしていました。でも次の日から変わったんです。誰かに詰められたわけでもないのに、「A社、担当者不在で名刺交換のみ」「B社、来週水曜に再訪の約束」と、具体的に書くようになりました。人に見られる日報より、AIに「材料不足」と突き返される方が効いた、というのが現場の実感です。
要約させて初めてわかる、書き手の癖
AIに要約させると、営業担当ごとの癖がはっきり出ます。ある担当は「訪問した」「説明した」という行動は書くのに、相手の反応を書きません。別の担当は逆に、相手の反応ばかり書いて、次に自分が何をするかを書きません。
ここでの判断の分かれ目は、こうです。行動だけ書く癖の担当には「相手は何と言いましたか、一言でいいので書いてください」と個別に伝えます。反応だけ書く癖の担当には「次のアクションと期日を最後に一行足してください」と伝えます。同じ「日報が薄い」でも、原因が違えば直す場所も違うんです。ここを揃えて指導すると、直る担当と直らない担当に分かれます。
私たちがTSUNAIDEで大事にしている指標は、名刺の枚数ではなく「次回商談の日程を確定できた件数」です。日報も同じで、書くべきは「会った」ではなく「次にいつ会うか」。ここが空欄の日報は、AIの要約以前に営業として未完成だと私は考えています。
AIは手を抜く道具じゃなく、抜けを見せる道具
AIに日報を要約させる話をすると、「楽をするための仕組みですね」と言われることがあります。正直、違います。楽になるのは読む側であって、書く側はむしろ緊張するようになりました。抜けがあると、AIがそのまま「抜けています」と返してくるからです。
当社支援案件・2026年時点の実績値ですが、AI開発の試作から本番運用への移行率は82%です。この数字を出すたびに言われるのは「AIの性能の話ですか」ということですが、実際は逆です。試作で終わる案件の多くは、AIの精度ではなく、入力する側の運用が続かなくて止まります。日報要約もまったく同じで、AIの賢さより先に「毎日ちゃんと書くか」が試されるんです。
ここでの判断基準はシンプルです。AIを入れて1週間で日報の質が上がったら、そのまま運用を続けます。逆に1週間経っても「特になし」が続くなら、AIの設定を疑う前に、現場に直接聞きに行きます。「書きにくい理由、なんかあります?」と。テンプレートが悪いのか、書く時間がないのか、そもそも訪問件数が少なくて書くことがないのか。原因によって手当てはまったく違います。
地味だけど、これが一番効きます
展示会支援でも営業代行でも、私たちが結局やっているのは同じことです。派手な戦略より先に、現場の記録を正直に残すこと。当社支援案件・2026年時点の実績値では、展示会1回あたりの商談化は平均20件です。ですがこの数字は、会期中の名刺交換の勢いではなく、会期後の日報とフォローの丁寧さで決まります。
正直、地味です。AIを入れても、結局は人が毎日書き続けるかどうかにかかっています。テレアポでも同じで、リスト設計を見直した好調案件ではアポ獲得率が0.6%から3.2%まで上がりましたが、これも架電後の記録が正確だったからこそ、どのリストが効いているか判断できた結果です。仕組みだけ入れて満足すると、この積み上げはできません。
実務チェックリスト
- 日報テンプレートに「相手の発言」と「次回日程」の欄を分けてつくる
- AIの要約結果に「材料不足」の指摘が出た担当には当日中に直接理由を聞く
- 行動だけ書く癖の担当には「相手の反応を一言足す」ルールを個別に伝える
- 反応だけ書く癖の担当には「次のアクションと期日」を最後に一行加えさせる
- 週次で「次回商談の日程が確定した件数」を日報から集計する
- AI要約の運用は1週間で日報の質が変わったかを確認して継続判断する
- 「特になし」が3日続いた担当には仕組みでなく現場に直接足を運んで聞く
